『勝負師と冒険家』(羽生善治、白石康次郎著)

 この前、あるところで海洋冒険家・白石康次郎さんの話をお聞きする機会があったことを書きました。この本を買ったのは、お話をお聞きする前だったと記憶しています。実は高校生の頃、ヨットで世界一周することにあこがれを持っていました。そんなこともあって白石さんに興味を持っていました。
 先日お聞きしたお話から、白石さんはとても情熱的な方だと思いましたし、お話は単にヨットのことだけでなく、彼の真摯な生き方についてでもありました。この本でも、友人である羽生善治を相手に、非常におもしろい話が展開します。もちろん、羽生さんの話も含蓄に富み、味わい深い内容です。
 白石さんの師匠の故多田雄幸さんは天才的なヨットマンだったそうですが、白石さんは論理的な勉強家だと思います。非常にバランスがとれた方だと思います。ヨットもご自身で作られるそうですが、自分でものを作っている人は現実、現場をしっかりと理解されているなと感心します。白石さんは単に情熱的なヨットマンであるだけでなく、現実主義者だと思います。
 また彼は視野が広いです。例えば、こんな発言から、彼が良い意味での国際主義者の側面も持っているなと想像します。
「スキーでもジャンプで日本人の成績がいいと、対戦国はルールをどんどん変えてくるでしょう。でも僕は、逆に健全だと思うこともある。日本人が憎いんじゃなくて、独走を許さないんだよ。強いのが出てきたら、またルールを変えるわけ。だけど、日本の場合はちょっと外国と違う。あまりルールを変えたかがらない。」
 彼のような人が、たとえば柔道の世界で上にいると面白いのではないかと思います。
 アマゾンの書評でも好意的なコメントがありますが、いい対談だと思いました。この前、お話をお聞きしたときの声の調子がよみがえってくる感じでした。