『2012年、世界恐慌』(朝日新書)

 「百年に一度の不況」の結末を、まだわれわれは見ていないのではないかとずっと思っています。1989年をピークとする日本のバブル経済の崩壊は日本だけの問題でしたが、今回の先進国同時不況は相当重い状況なのではないかという印象がずっとあります。著者は、大学の先生とメガバンクの銀行員。かなり悲観的な内容になっていて、「われわれ庶民はどうすりゃいいの?!」となってしまいます。田舎に農地を買って(あるいは借りて)、自給自足ができるようにでもしましょうか?
 アメリカもヨーロッパも、そして日本も、すべて政府部門の赤字が第二次世界大戦中くらいの水準になってきているわけですが、民主主義の制度下において劇的に国民の生活水準を下げるようなことは、なかなか強制できるはずもありません。ギリシアはどうなるのでしょうか。脆弱な基盤の上に築かれてきたEUが今回の不況を克服することができるのか。カネの切れ目が縁の切れ目になるのか。またアメリカの資本主義、特に金融業界の制度が変わっていくのかどうかにも興味があります。
 この本にかえると、破綻した財政(=大量に発行された赤字国債)をチャラにするには、インフレしかないのではないかということになります。最悪1945年8月に帰っていくのかなと、ぼんやり思ったりしています。