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永遠の「さよならホームラン」。

今夜の東京ドームでの対タイガース最終戦は、今シーズンなんどか見たジャイアンツの試合の中で最高の試合だったかもしれない。エースの内海はしばしばボールが先行し、決して最高の調子だとは見えなかったけども、もうだめかと思われた7回、8回をしのぎ、ついに10回の表まで投げきった。9回、10回に投げたボールは、相当根性が入っていて、147球も投げたことをまったく感じさせない内容だった。1−1のまま迎えた10回裏、1、2塁に走者をおき、内海に打席が回ってきた。一瞬、背番号26かと思われたユニフォームがバットを振る姿を見た観衆は、内海がこの回も打席に立つのかと勘違いし、ドーム内にはどよめきがひろがったのだけど(ボクもそのひとり)、その打者が背番号24の高橋由伸だったことがわかると、さらに大きなどよめきが起こった。そしてその高橋はなんと3ランホームランをライトスタンドに放ち、ジャイアンツは2試合連続のさよなら勝ちをおさめた。

昨年まで野球に「まったく」と言ってもいいほど関心を持っていなかったボクは、今年はかなりの試合を観に、東京ドームに足を運んできた。野球にはまだ疎いボクでも、代打の打者を待ち受ける運命がどれだけ残酷なものか、なんども見てきた。2割、3割の打者は単純な確率からいえば、10回打席に立って、2回、あるいは3回しか生き延びることはできない(逆に言うと、7回か8回は無残にもその場で死んでいくのだ)。走者を塁において、併殺打なんて打ったあかつきには、強烈なファンからはそのシーズン中、ずっとやじられるなんてこともあるかもしれない。代打で期待通りに塁に出る、ヒットを打つということは、それほど難しい。代打の打席に立つことは、あまり勝ち目のない戦いをしに、リングにあがることを命ぜられることに等しい。ましてや代打でホームランを打つなんてことは、「あってはならない奇跡」なのだ。

代打のホームランと言えば、もうひとつ記憶に残っているホームランがある。それはロッテから移籍してきた大村三郎(ロッテでは、サブロー)が、一軍登録が済んだばかりの日(7月1日の対ドラゴンズ戦)、ジャイアンツのユニフォームを着て立つ初打席に、なんとホームランを打ってしまったのだ。大村サブローは、打てないジャイアンツ打線の助っ人として、急遽ロッテからトレードされてきたのだけど、悲しいかな、この初打席のホームラン以来、2号めのホームランはまだ生まれていない。あのホームランは、ボクの脳裏には、陽炎のように残っている。

ボールが変わったことが理由にあげられているけども、今年東京ドームでジャイアンツのホームラン数は現時点で確か100を切っていて、昨年の半分以下にとどまっているという記事を読んだ記憶がある。それくらい今年の東京ドームで、ジャイアンツはホームランが打てていないということなのだ。内海、澤村などの投手陣が頑張っても、なかなか勝てない試合が多かったのは、打線がまったくダメだったせいでもある。

今夜の高橋のさよならホームランの目撃者のひとりとして言わせてもらえば、さよならホームランは、ダイヤモンドのはるか彼方、「永遠」とも言える空間に消えていったひとつの魂だとさえ思えた。そんな試合にはそう滅多にお目にかかれるわけではないことは、今年なんども東京ドームに足を運んだボク自身の経験からも言える。でもそんな奇跡がごくたまに起こるから、熱心なファンはこのスポーツのドラマに引きつけられるのかなとも思った。

もう一度繰り返すけど、「さよならホームラン」は永遠の西方浄土に消えていった魂みたいなものだ。その現場に立ち会うことができるのは、本当にラッキーなことなのだ。