『「課題先進国」日本』(小宮山宏著)

 東大の前総長が在職中の2007年に出された本。副題には「キャッチアップからフロントランナーへ」とあります。人類に共通する課題を抱える日本は、欧米に解答を求める段階から、自らの課題を定め解決していくことで、世界に多大なる貢献をすることができるというメッセージ。「出羽の守」(欧米「では」こうだといって、外国を紹介するだけの論文=紙を書く人たち)、「誤用学者」(理論やモデルを誤用する知識人)はもう終わっているというご意見には100%同意。
 数ヶ月前だったと記憶しますが、雑誌「日経ビジネス」の巻頭インタビューで、日本人が言うと信じないのに、同じことを外国人(特に欧米人?)が言うと日本人はありがたがって聞く、というような発言をされていました。それを読んだとき、きっと何度も悔しい思いをされたのだろうなと直感的に思いました。この本では、先生の熱い気持ちのこもった「日本人に対する応援歌」を聞いた気になりました。
 あとがきに、「本質を捉える知」、「他者を感じる力」、「先頭に立つ勇気」を学生生活で獲得すべき目標にせよと、総長に就任して初めての入学式で話したとあります。この三つは、会社を経営しているすべての経営者にとっても、常に意識していないといけない必要条件でもあるかと思います。