『村田良平回顧録上巻_戦いに敗れし国に仕えて』(村田良平著)

 最近読んだ本の中で、もっとも骨があり、かつ著者の信念を強く感じた本です。週末、上巻を読み終えましたので、今週から下巻に取りかかろうと思っています。日本の政治家や高級官僚の方たちの中で、しっかりした回顧録をお書きになられる方が非常に少ない印象を持っていて、いつも物足りなく思っていましたが、この本は例外中の例外です。作者が、日本とわれわれ日本人に残そうとする遺書なのだろうと思いながら、ボクは読んでいます。
 一般にはそれほど知られていない方かもしれませんが、日本の代表的な外交官のお一人で、80年代から90年代にかけて、外務省事務次官、駐米大使、駐独大使を歴任されました。まさに戦後の日本外交を、事務方において支えていらっしゃったトップのお一人です。最近、日米間の核兵器持ち込みに関わる密約の存在に関して、マスコミの取材に応じてオープンにされています。実際、この上巻において、以下のように明記されています。
 「実は、核兵器を搭載する米国感染の日本への寄港と領海通過には事前協議は必要としないとの『密約』が日米間にあった。つまりこの点については、政府は国会答弁において、『米国からの事前協議がない以上、日本へ寄港ないし日本の領海と通航する米国艦船に核兵器を積んでいるはずはありません』との一貫した説明を続け、国民を欺き続けて今日に至っているといえる。」(上巻ページ263)
 政治家、学者、同僚たちの人物評価も非常に面白く読ませていただきました。下巻を楽しみにしています。

古森義久さんの『村田良平回顧録』評
47 News
岡崎久彦さん(村田さんと外務省同期)の本書に関するエッセイ