小説『後藤新平』

 ここ数年、白州次郎が中高年の間でブームになっているかなと思うのですが、白州よりもずっと前にいた、ある意味もっとすごかったのが、この後藤新平。ボクがよく読む作家の鶴見俊輔さんのおじいさん。白州次郎は会社経営者の経験もあるけども、吉田茂のブレーンのひとりだったということでどちらかというとコンサルタント的なイメージが強いのですが、それに対して、後藤新平は、東京市長(現在の東京都知事)、植民地経営(台湾や満州鉄道)、内務大臣、外務大臣などを経験していて、当事者として明治後半から大正時代の政治の渦中にあった人。
 白州さんも、後藤さんもいいなと思うには、閥をつくったりしないで、一匹オオカミ的な存在だったこと、地位に恋々としなかったこと、自分の信念を強く持っていたこと。(白州さんはその上、金持ちのボンボンでかっこいいから今に至っても人気があるのでしょうが)
 解説を読んで知ったのですが、この「小説」の著者、郷仙太郎が青山東京都副知事と知り驚きました。そのことを知った後では、関東大地震後の東京の都市計画に携わった後藤新平への著者の評価や思いには深いものがあるのではないかと思いました。
 後藤新平は、薩長の藩閥や政党に属する訳でもなく、学歴があるわけでもなかったのに、よくあれだけの地位に就けたものだと思います。後藤は東北岩手の水沢の出身。同じく水沢出身の政治家として民主党党首の小沢一郎さんがいます。結局首相になれなかった後藤新平ですが、小沢さんは今年総理の椅子につくのかどうか。