ビルの死

 夕方、日比谷から内幸町方面に移動しているときに、日比谷公園の前にある日比谷三信ビルがあとかたもなく、消え去っていることに気づきました。ビルは生き物ではないので、死とは無関係ですが、きれいに立て壊されて更地となってしまった空間を見ていると、死と同様の喪失感にとらわれました。「ビルの死」は、僕らが気づかないうちに、昼間ではなく、夜間にひっそりと、でも着実にすすめられていました。死体の一部である、ビルの廃棄物たちは、僕らが知らない日本の地方の、きっと山間部に、こっそりと処分されていることでしょう。

 東京で、歴史のあるビルがまた一つなくなりました。