「しけのあるうちにイカリを巻け」

『できる会社の社是・社訓』(新潮新書)で知ったのですが、大洋漁業(現在のマルハ)の創業者・中部磯次郎の言葉です。海がしけているうちに船を出せ、天候が治まってからではもう遅いとして、リスクをとる重要性を教えてくれています。それから大洋漁業の寄付で出来た大学が、神奈川工科大学だということも、初めて知りました。

この本の中には、いろいろな会社の創業者たちの思いが詰まった言葉が紹介されていますが、一番最後にでているこの「しけのあるうちにイカリを巻け」というのが、一番気に入りました。でも、検索すると、中部磯次郎の情報はあまりネットにでていなくて、残念な思いがします。

蛇足ですが、この本の中に、サントリーの話もでてきます。サントリーの社是は、

  1. 開拓者精神
  2. 品質本位
  3. 海外発展

だそうですが、この開拓者精神というのが、「やってみはなれ」ということにつながっていて、サントリーのユニークさだとされています。で、ここからが本当の蛇足なのですが、70周年記念の社史「サントリーの70周年」のなかで、サントリー出身の直木賞作家、山口瞳と開高健が、創業者の鳥井信治郎が艶福家であった噂を確かめるために、退職社員のものを訪れます。そのときの以下のような会話が、社史にでているそうです。

  • 「どんなときにも10人はいましたな」
  • 「十人?女性が?」
  • 「そうだす」
  • 「・・・・・・」

他社の社史には、これだけ破天荒で、読者を酔わせるものは存在しないと、『できる会社の社是・社訓』の著者はしています。こんなおおらかな会社がもっとあれば、ビジネスもおもしろくなると思うんですけど、どうでしょうか?ただし、サントリー100年史には、そのような遊び心、洒脱さは感じられないそうです。