出井伸之著『迷いと決断』(ソニーと格闘した10年の記録)

出井さんは、一時期は日本を代表する経営者とたたえられ、辞任する前後にはワーストの経営者とまで言われた人。以前読んだ出井さんの『ONOFF』は、出井さんが経営者として高い評価を得ていた頃の本で、出井さんの華麗な公私の活動を知ることができます。この頃が、出井さんの華の時期だったのかもしれません。それに対して、この『迷いと決断』は、いわゆる「ソニーショック」に発する出井さんに対する罵声のような批判を受けて、ソニー会長兼CEOのポジションを辞任して1年以上たって書かれた本。

この『迷いと決断』はとても読みやすい本で、数時間で読み終えることができます。が、中身は重くて、数多くの経営のヒントとともに、言葉の端々から、偉大な先輩たち(井深、盛田、そして大賀)へのさまざまな思いが読み取れます。創業者ではない(あるいは創業の世代から引き継いだ)、「雇われの経営者」の背負わされた苦しみを想いました。(ユニクロの社長だった玉塚さんも、偉大な創業者である柳井さんの存在に圧しつぶされたことを思い出します)

この『迷いと決断』を読んだあとに、『ONOFF』を読まれることをお薦めします。僕は、4年ほど前、『ON OFF』を読んだときには、デレッタントな話の連続に少々嫌気を感じましたが、この2冊を読んでみて、出井さんのことが少しは理解できたかなと思いました。そして、一度、この方にお会いして、ビジネスのお話を伺ってみたいなとまで思っています。